戸籍の記載原因と記載事項/自分でつくる家系図
 
相続・遺言はこちら
トップ > 戸籍の記載原因と記載事項
戸籍への記載は、戸籍法に定めている届出があった場合が主な原因であり、
それ以外に改製や再製があった場合も行われます。このページでは、届出
の種類と、代表的な記載内容の例をあげます。

1.届出の種類

  戸籍法第4章は「届出」となっており、この中に15種類の届出が   でています。   第一節 通則(第二十五条―第四十八条)   第二節 出生(第四十九条―第五十九条)   第三節 認知(第六十条―第六十五条)   第四節 養子縁組(第六十六条―第六十九条の二)   第五節 養子離縁(第七十条―第七十三条の二)   第六節 婚姻(第七十四条―第七十五条の二)   第七節 離婚(第七十六条―第七十七条の二)   第八節 親権及び未成年者の後見(第七十八条―第八十五条)   第九節 死亡及び失踪(第八十六条―第九十四条)   第十節 生存配偶者の復氏及び姻族関係の終了(第九十五・九十六条)   第十一節 推定相続人の廃除(第九十七条)   第十二節 入籍(第九十八条・第九十九条)   第十三節 分籍(第百条・第百一条)   第十四節 国籍の得喪(第百二条―第百六条)   第十五節 氏名の変更(第百七条・第百七条の二)   第十六節 転籍及び就籍(第百八条―第百十二条)   第一節は通則、つまり以下の節の届出に共通する事項をまとめたもの   なので届出ではありません。届出のメルマガではないので、そこは   省略します。参考になる本のページで紹介した「戸籍実務六法」   には、これらの記載例だけで130ページあります。   一方、大正3年戸籍法にはこれ以外の届出も定められています。      「隠居」   「家督相続」、「推定家督相続人ノ廃除」、「家督相続人ノ指定」   「入籍、離籍及ヒ復籍拒絶」、   「廃家及ヒ絶家」、「分家及ヒ廃絶家再興」   「氏名、族称ノ変更及ヒ襲爵」      なんとも沢山ありますね。隠居とか、分家とか、再興とか、時代劇   でも見ているようですが昔は法律上定められていた訳です。      これらの用語は、全部ではありませんが、用語集のほうに解説して   あります。   用語集url:   http://legal-assist-yokohama.com/kakeizu/yougoshu.php

2.戸籍の記載事項

  戸籍サンプル 明治19年式明治31年式大正4年式昭和23年式   戸籍のコンピュータ管理について補足しておきます。平成6年の   法務省令第51号で戸籍のコンピュータでの取扱方法が定められ、順次   コンピュータ化が進んでいます。時期は市町村毎に異なりますので、 まだ従来どおりのままのところもあります。      そしてコンピュータ管理に移行した場合、その前の紙の昭和23年式戸籍   は改製原戸籍となり、保存期間は100年です。      紙で管理されている場合は、謄本とおなじ書式の原本があった訳です。   しかし、コンピュータ管理に移行した後は、謄本のかわりとなった   全部事項証明書と同じ書式の紙が役所に保存されているわけではあり   ません。あくまでもデータとしてのみ存在することになります。      全部事項証明書の書式は、昭和23年式と全く異なりますが、内容と   しては同じで、読みやすく記入されています。以下の説明では昭和23年   式といった場合、この全部事項証明書のことも含みます。書式は異なり   ますが、内容は類推で理解できるものと思います。一点、細かい相違点   をあげておくと、事項毎の印は押されていません。

2.1.個人情報欄

  ・亡くなった場合には、名前の上にバツが付けられます。   ・父母が亡くなっている場合は父母欄の氏名の上に「亡」が付きます。   ・大正4年式と昭和23年式では養子縁組した場合に、父母欄の並びに    養父母欄が設けられます。   ・明治19年式は名前の右の欄に家族との続柄が記入されます。   ・明治31年式の画像で読みにくいところは「前戸主トノ続柄」および    「戸主と為タル原因及年月日」「家族トノ続柄」   ・大正4年式は「家族トノ続柄」が父母欄の並びに設けられることが    あります。   ・「家族トノ続柄」欄は、その個人が戸主の子供でない場合に記入    されます。      例えば、戸主の母親の場合、続柄欄には名前の上には「母」と      記入され家族との続柄欄には「亡父xxx妻」と記入されます。   個々の文字が読めるかどうかという問題を別にしたら、個人情報欄は   判りにくい点は少ないでしょう。   

2.2.本籍欄

  戸籍を識別するキーは、ここに記入される本籍と、戸主あるいは   戸籍筆頭者となります。      ここには、建物でなく土地を識別する内容が書かれます。一般的には   不動産の登記などで使用される「地番」という方式ですが、住居表示   の採用された地域では、住居表示の方式の場合もあります。ただし、   住居表示の方式でも、建物までは識別しません。        この部分、既に発行のメルマガでは「本籍は地番表示」として     いたのと不一致になってますが、こちらが正しくなっています。        同じ役所の管轄範囲内で転籍した場合には、この欄内で古い本籍に   線を引き、新しい本籍が記入されます。      古い戸籍では、この本籍欄に事項欄への記入と同様に、転籍年月日   まで記入されているものもあります。

2.3.戸籍筆頭者欄、前戸主欄

  戸籍右下の同じ場所ですが、昭和23年式では戸籍筆頭者、それ   以前の方式では前戸主が記入されます。      戸籍筆頭者は戸籍のキーですが、前戸主はキーではありません。   もっとも、戸籍をたどる時に古い戸籍を取得する時には、キー   になりえます。      内容としては氏名が書かれますが、明治19年式では「亡父」   というように関係と亡くなっているかどうかが氏名の前に書かれます。

2.4.事項欄

  「(1)届出の種類」で書いた各種の届出のほかに、   戸籍の改製、再生、消除のような事項が記入されます。   明治19年式、明治31年式、大正4年式では、事項欄だったものが、   昭和23年式では戸籍事項欄と身分事項欄に分かれました。これに   より、改製や転籍のような個人の身分に変更のない事項は、戸籍   事項欄に、身分に変更のある事項は身分事項欄に分けて記入され   るようになりました。   新しいものでは事項毎に終わりに印が押され、改行されていますが、   古いものでは印はあっても改行されず続けて記入されたり、印が   謄本では殆ど見えないものがあります。   ここに記入されるパターンはとても沢山ありますので、全てを書く   事はできません。そこで代表的なものをあげておきましょう。       ・出生    (本籍地に届け出た場合)     平成5年1月1日東京都港区で出生同月14日父届出入籍    (非本籍地に届け出た場合)     平成5年1月1日神奈川県横浜市で出生同月14日父届出     同月18日同市長から送付入籍    古いものでは番地まで入っていたり、年月日が最初になかったり、    送付した市区町の名前が入っているなどのバリエーションがあり    ます。  ・婚姻    (夫の氏を称する婚姻の場合)     夫婦の新戸籍が作られ、夫婦はそれぞれ元の戸籍から抜けるので     都合3の戸籍に記載されます。     新戸籍と夫の戸籍は同じ役所の管轄内とします。     <夫婦の新戸籍>      戸籍事項欄       平成5年5月5日編製      夫の身分事項欄       平成5年5月5日佐藤桃子と婚姻届出東京都港区高輪1丁目       1番地鈴木太郎戸籍から入籍      妻の身分事項欄       平成5年5月5日鈴木一郎と婚姻届出神奈川県横浜市鶴見区       2丁目2番地佐藤幸夫戸籍から入籍     <夫の婚姻前戸籍>      夫の身分事項欄       平成5年5月5日佐藤桃子と婚姻届出東京都港区白金台       3丁目3番地に夫の氏の新戸籍編成につき除籍     <妻の婚姻前戸籍>      妻の身分事項欄       平成5年5月5日鈴木一郎と婚姻届出同月7日東京都港区長       から送付同区白金台3丁目3番地に夫の氏の新戸籍編成に       つき除籍    (古い例をいくつか列挙しておきます。本籍地は現在の表示です)       埼玉県さいたま市緑区4丁目4番地加藤雄一次女大正7年        7月7日鈴木次郎と婚姻届出同日入籍       明治45年6月3日山梨県甲府市北口1丁目3番地元戸主        廃屋川崎ウメ婚姻届出同日受付入籍       明治12年5月15日千葉県千葉市中央区栄町8丁目8番地        山本茂兵衛長女入籍ス  ・死亡    (本籍地に届け出た場合)     平成20年12月1日午後6時20分東京都港区で死亡      同月14日親族山田三郎届出除籍    (全員除籍になる場合) 戸籍事項欄にも記載がされ、戸籍が     除籍簿に移されます      平成20年12月14日消除    古いものでは死亡日時が日付までのもの、時までのものもあります。  ・転籍    (違う役所の管轄する本籍への転籍)     <転籍先の新戸籍>      新戸籍が作成され、戸籍事項欄に以下のように記入される       平成20年12月1日東京都港区高輪5番地から転籍届出     <転籍元の戸籍>      戸籍事項欄に以下のように記入され、除籍となり、      除籍簿に移動されます       平成20年12月1日東京都港区高輪5番地に転籍届出       同月5日同区長から送付消除    (同じ役所の管轄する本籍への転籍)      戸籍事項欄に以下のように記載され、本籍地欄の旧本籍は線で      消され新本籍が記入される       平成20年12月1日東京都港区高輪5番地に転籍届出    古いものでは、年月日の記載位置が後ろだったり、届出人の名前も    入ったりなどのバリエーションもあります。    本籍地に関する変更として、転籍とは別に、地番変更もあります  ・改製(昭和23年書式)     昭和23年に新戸籍法が施行されたわけですが、すでに作成されて     いる戸籍をただちに全部書替えるわけには行かないので、段階的な     移行処置がとられました。     第一に10年間は新法戸籍とみなすとされました。     第二に10年たった後に、順次切り替えられていきました。     更に切り替え期に入った時点で内容的には新基準をみたす戸籍     (親子2代で親が戸主など)は、その事を認定するための記入が     なされました。     移行時には書式は昭和23年式だが、内容は旧基準の家族構成の     ままという戸籍もつくられています。    (大正4年式戸籍が昭和23年式戸籍と認められた場合)     昭和32年法務省令第27号により       昭和34年10月30日本戸籍改製         (大正4年式戸籍が昭和23年式戸籍にまるまる改製された場合)     <改製前の戸籍>      以下のように戸主事項欄に記入され、改製原戸籍の印をおされる      昭和32年法務省令第27号により        昭和36年8月8日あらたに戸籍を編成したため本戸籍消除     <改製後の新戸籍>      新たに戸籍が作られ、戸籍事項欄に以下のように記入されました      昭和32年法務省令第27号により昭和36年8月8日改製       につきあらたに昭和36年8月8日本戸籍編成    (大正4年式戸籍の一部を分離し昭和23年式戸籍に改製された場合)      旧戸籍に長男=戸主、母、二男がいた場合、親子2代でも新基準      に合致しないため、母と二男で新戸籍をつくったケース     <改製前の戸籍>      戸籍事項       昭和32年法務省令第27号          により昭和34年10月30日本戸籍改製      母の身分事項       改製により新戸籍編成につき昭和34年10月30日除籍      二男の身分事項       昭和34年10月30日除籍 母に随い除籍     <改製後の新戸籍>      新たに戸籍が作られ、戸籍事項欄に以下のように記入されました       昭和32年法務省令第27号により昭和34年10月30日         同所同番地日本太郎戸籍から本戸籍編成  ・改製(平成6年電子化)     改製事由が「昭和32年法務省令第27号」でなく     「平成6年法務省令第51号附則第2条第1項」となります。     改製された戸籍には、戸籍筆頭者以外の人が死んでいる場合など     その時点で有効でない事項は、転記されません。  ・家督相続     昭和23年の新戸籍法以前にありました。     現在の相続はあくまでも財産・権利・義務の引継ぎなので、戸籍     には影響ありませんが、家制度のものとでは「家」を引き継ぐ     ために「家督相続」がありました。     ただし戸籍法上で「家」が明確に定められたのは明治31年の     法改正からなので、それ以前の戸籍では単に「相続」と記入され     ていました。     「家督相続」があった場合には、新たな戸籍を編成し、旧戸籍は     除籍になります。    (家督相続)     <前戸主の戸籍>      戸主事項欄に以下のように記載され、除籍となりました       大正14年9月11日日本太郎ノ家督相続アリタルニ         因リ本戸籍ヲ抹消ス     <新戸主の戸籍>      新戸籍がつくられ、戸主事項欄に以下のように記入されました       大正14年9月1日前戸主一兵衛死亡ニヨリ家督相続届出        同月11日受付 事項欄の記載原因は(1)に書いたとおり、多くの種類があります。 ここでは一部のみを書きましたが、他のものも記載のパターンは 同じようなものが多くなっています。