遺留分, 姻族, 改製原戸籍, 家督相続, 血族, 限定承認, 公証人, 公正証書, 公正証書遺言, 戸主, 戸籍, 戸籍筆頭者, 親族, 自筆証書遺言, 除籍, 絶家, 相続, 相続欠格事由, 相続放棄, 尊属, 単純承認, 直系, 入籍, 廃家, 廃除, 卑属, 秘密証書遺言, 分家, 法定相続人, 法定相続分, 傍系, 遺言, 遺言の証人
遺留分(いりゅうぶん)(民法1028-1044条):相続の内容は遺言や遺産分割協議によって定める事が出来るが、これをもってしても侵せない法定相続人(ただし兄弟姉妹以外)の権利。あくまでも権利なので、相続人が放棄することはできる。また相続人が廃除された場合および相続欠格事由にあたる場合は、それぞれの規程に従います。遺留分は、直系尊属のみの場合は1/3となり、それ以外の場合は1/2となる。遺留分は、何もしなくても自動的強制的に返還されるものではなく、自分から請求する必要があります。これを遺留分減殺請求権といいます。遺留分が侵されたのを知ってから1年以内に請求しないといけません。また相続開始から10年で消滅します。 [用語集トップに戻る]
姻族(いんぞく):自分もしくは血族が婚姻した場合に生ずる、配偶者および配偶者の血族との関係。ただし民法上の親族に入る姻族は3親等以内となる。血族の対語。 [用語集トップに戻る]
改製原戸籍(かいせいげんこせき):戸籍法の改正が行われた時に、すでに作成されていた戸籍を新しい書式に移し変えます。この時の改正された後の戸籍に対して、旧法に基づく改正前の戸籍を改製原戸籍といいます。戸籍の本籍欄の右に「改製原戸籍」という印が押されます。 [用語集トップに戻る]
家督相続(かとくそうぞく):現在の法律上の相続が自然人の死亡に伴う財産・権利・義務の継承であるのに対し、戸や家の戸主としての地位を財産とともに継承するもの。現在は、子が婚姻によって親と同じ姓の戸籍をつくったとしても、それはあくまでも新しい戸籍ができたもので分家のようなもの。親の戸籍自体はいつかの時点で除籍となってしまう。これに対し、家督相続の場合は、その戸籍自体が継承されていくので、廃家、絶家にならない限り存続することになる。また、現在の相続は被相続人の死亡によって開始するが、家督相続の場合は前戸主の隠居によっても開始する。 [用語集トップに戻る]
血族(けつぞく):自分と血のつながりのあるもの(=血縁のあるもの=自然血族)。および養子縁組で親族となったもの(法定血族)。民法上の親族に含まれるのは6親等以内となる。姻族の対語。 [用語集トップに戻る]
限定承認(げんていしょうにん)(民法922-937条):相続の選択肢のひとつ。被相続人の所有していた財産や権利・義務を、借金や保証債務なども含めて、正の財産の範囲内に限って引き継ぐこと。相続人が複数人いる場合(共同相続)は、全員が共同でしなければなりません。つまりひとりでも単純承認したら限定承認はできないという事になります。相続人が亡くなって、自分が相続人であると知ったときから3ヶ月の熟慮期間内に、相続財産の目録作成と家庭裁判所への申述が必要です。熟慮期間は家庭裁判所への申し立てで伸長することができます(民法915,920条)。複雑な手続きとなるため、あまり使われておらず、平成18年の司法統計によると相続放棄が約15万件なのに対し、限定承認は1万件となっています。相続の他の選択肢としては、単純承認、相続放棄があります。 [用語集トップに戻る]
公証人(こうしょうにん):
公証人法に定められた公務員です。公証人の仕事は、大きく分けて(1) 公正証書の作成、(2) 私署証書や会社等の定款に対する認証の付与、(3) 私署証書に対する確定日付の付与の3種類があります。詳しくは日本公証人連合会のサイトをご覧ください。
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公正証書(こうせいしょうしょ): 公正証書は、公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。遺言公正証書、任意後見契約公正証書、金銭の貸借に関する契約や土地・建物などの賃貸借に関する公正証書、離婚に伴う慰謝料・養育費の支払に関する公正証書並びに事実実験に関する公正証書などがあります。詳しくは日本公証人連合会のサイトをご覧ください。 [用語集トップに戻る]
公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)(民法第5編第7章969条):
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従う必要があります。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人(遺言の証人)に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
口がきけない者や耳が聞こえない者が遺言する場合の取り決めもあります。
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戸主(こしゅ):戸籍の先頭に書かれるという点では、戸籍筆頭者と同じですが、家制度においては、分家や家族の婚姻などにおいてその同意が法律上必要とされるなどの権限を持っていました。旧戸籍でも、戸籍は戸主と本籍で特定されていました。 [用語集トップに戻る]
戸籍(こせき):戸籍の戸とは、家族集団を意味していて、その単位で国民を登録する仕組みのこと。日本にいると普段接することがなくても当たり前のものと思っているでしょうが、国によって随分と仕組みが異なっています。たとえばアメリカ合衆国では国民に割り当てられている番号として社会保障番号があるが、戸籍に相当する仕組みはありません。
・日本の戸籍は明治4年に制定されました。実際に運用されだしたのは5年なので明治5年式戸籍、またの名をその年の干支にちなんで壬申戸籍(じんしんこせき)と呼ばれます。この時代の本籍は住所地なので、現在の住民票の機能も持っていました。身分の情報などを記載しているため現在は公開されていません。
・明治19年に法改正され住所が「屋敷番」から「地番」に変わりました。また除籍制度が設けられました。これを明治19年式戸籍(書式)といいます。
・明治31年に法改正され基本単位が「戸」から「家」に変わりました。これを明治31年式戸籍(書式)といいます。
・大正3年に法改正されました。これを大正4年式戸籍(書式)といいます。
・戦後昭和22年に法改正されました。登録の単位が「家」から「夫婦」に変わり、戸籍の識別に使われていた従来の戸主が廃止され、戸籍筆頭者に変わりました。これを昭和23年式戸籍(書式)といいます。この変更は大きく、従来は数世代がひとつの戸籍に入っていたのが、基本的に2世代となりました。戦後の混乱のため、実際に改製されたのは、だいぶ後になり、場所により異なります。これが現行の戸籍となります。ただし、記録される内容は同等ですが、戸籍の電子化管理が進んでおり、その平成6年式戸籍事項証明書のサンプルはこちらです。
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戸籍筆頭者(こせきひっとうしゃ):現行戸籍において、戸籍を特定するために使われる。戸籍の先頭に書かれる人。戸籍は、戸籍筆頭者と本籍の組み合わせによって特定されます。戸籍は、戸籍筆頭者と本籍を指定して取得することになります。この旧民法における戸主のような権限を認められているわけではありません。 [用語集トップに戻る]
親族(しんぞく):血族と姻族からなります。ただし、民法(第4編)では、6親等以内の血族と3親等以内の姻族および配偶者を親族と限定している。民法では、親族関係の各種の条項中で「親族」が権利・義務の対象として定められている。たとえば「第730条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。」がある。
親族の呼び方や親等については、親族関係図を用意しました。新たなウィンドウが開きます。図が細かいのでパソコン用のみになっています。
少し読みなどについて補足しておきます。
・おじ・おば:自分の父母より年上の兄弟は伯父・伯母とし、年下は叔父・叔母と書きますが、では父母の間だったら、どう書くべきなのか?判りません。
・高祖父母:こうそふぼ、ひいひいおじいさん、ひいひいおばあさん
・曾祖父母:そうそふぼ、ひいおじいさん、ひいおばあさん
・甥姪:おい・めい
・曾孫:ひまご
・玄孫:やしゃご
・来孫:らいそん、きしゃご
・畏孫:こんそん
・またいとこ:はとこ
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自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)(民法第5編第7章968条):
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければなりません。自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じません。
すべて自筆が条件なのでワープロなどで書いたものは認められません。
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除籍(じょせき):
・戸籍に人が登録されるのは、出生した時、婚姻による場合、養子縁組による場合などがありますが、逆に戸籍から抜ける場合を除籍といいます。死亡、離婚、養子縁組の解消、婚姻で戸籍を独立させた場合などがあります。
・個人個人の除籍により生存している人がいなくなった戸籍は除籍簿に入り、80年の保存期間を経て廃棄されます。この除籍簿に入った戸籍そのものも、除籍といいます。戸籍の本籍欄の右に「除籍」という印が押されます。保存期間を超えたら、ただちに廃棄されるわけではなく、役所によっては長く保管されることもあります。
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絶家(ぜっか):戸主が死亡したが、家督相続するものがいないために、戸籍がなくなる事。しばしば新聞をにぎわす舌禍と同じ「ぜっか」と、「ぜっけ」の読みがあるようです。 [用語集トップに戻る]
相続(そうぞく)(民法第5編):自然人の死亡にともなって、その所有していた財産や権利・義務を引き継ぐこと。死亡した人を被相続人、引き継ぐ側の人を相続人という。相続人は、法律および遺言によって決まる。 注意すべきは借金のような負の財産や、保証債務なども含まれることである。なお、特定の個人のみが対象となる権利(一身専属の権利)、たとえば扶養される権利 は相続の対象とならない。相続人は、単純承認、限定承認、相続放棄を選択できます。日本国憲法以前は、家督相続といい、かならずしも死亡を前提としない相続の形態がありました。 [用語集トップに戻る]
相続欠格事由(そうぞくけっかくじゆう)(民法891条):本来は民法上相続人とされている人が、相続人になれない場合として、廃除と民法891条で規程している5項目の相続欠格事由があります。(1)故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者、(2)被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない、(3)詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者、(4)詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者、 (5)相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者 。簡単にいうと、自分にとって有利な状況を意図的につくりあげた者と言えるでしょう。 [用語集トップに戻る]
相続放棄(そうぞくほうき)(民法938-940条):相続対象となる財産や権利・義務のうち、負債のほうが多いときなどに、相続を受けないこと。3ヶ月の熟慮期間内に家庭裁判所に申述をする必要があります。限定承認と違って相続放棄は単独で行えます。相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされ、他の相続人が相続することになります。そのため、負債のほうが多いときには、他の相続人がその負債を負うので要注意です。平成18年の司法統計によると相続放棄が約15万件となっています。相続の他の選択肢としては、単純承認、限定承認があります。 [用語集トップに戻る]
尊属(そんぞく):血族のうち、自分より上の代に属するもの。卑属の対語。 [用語集トップに戻る]
単純承認(たんじゅんしょうにん):相続の選択肢のひとつ。被相続人の所有していた財産や権利・義務を、借金や保証債務なども含めて、包括的に無制限に引き継ぐこと。被相続人が亡くなって、自分が相続人であると知ったときから3ヶ月の熟慮期間を超えると自動的に単純承認したものとみなされます。熟慮期間は家庭裁判所への請求で延長することができます(民法915,920条)。また熟慮期間内であっても単純承認したものとみなされる場合(相続財産を処分した時など)があります(民法921条)。相続の他の選択肢としては、限定承認、相続放棄があります。 [用語集トップに戻る]
直系(ちょっけい):自分の父親・母親・子供は直系になります。これに対し、近いところで兄弟姉妹は傍系となります。直系の人に対して直系の人(祖父母、曾祖父母、孫など)も、直系といいます。言い換えれば、戸籍の階層を単純に上がっていくか下がっていくかして辿りつける人は直系、上がって下がるとか、下がって上がる人は傍系となるわけです。現在の戸籍の運用では、通常は、自分の直系の人を含む戸籍の情報のみを取得することができます。家系図の作成のために取得できる戸籍はこの範囲になります。ただし、昭和23年の法改正以前の戸籍は「戸」や「家」のまとまりで作られているため、取得した戸籍に中にはかなり離れた人が含まれることがあります。 [用語集トップに戻る]
入籍(にゅうせき):除籍の対語。出生、婚姻、養子縁組などに伴い入籍となります。除籍参照の事。 [用語集トップに戻る]
廃家(はいか):戸主が養子縁組や婚姻などにより他の戸籍に入るのに従い、元の戸籍がなくなる事。こわれた家ではありません。 [用語集トップに戻る]
廃除(はいじょ)(民法892-895条):被相続人に対して推定相続人が虐待や重大な侮辱をした場合、又は推定相続人に著しい非行があった場合に、被相続人が家庭裁判所に対して相続人としないようにしてもらう事。生存中でも、遺言でも請求できます。平成18年度でみると、審判が約180件に対して、認められたのは1/6程度となっています。 [用語集トップに戻る]
卑属(ひぞく):血族のうち、自分より下の代に属するもの。尊属の対語。 [用語集トップに戻る]
秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)(民法第5編第7章970-72条):
秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従う必要があります。
一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
三 遺言者が、公証人一人及び証人(遺言の証人)二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
自筆証書遺言が筆跡で本人確認するのに対し、この方式では公証人と証人が確認するので、証書自体は自筆である必要はありません。方式に則っていない場合、口のきけない者が遺言する場合の取り決めがあります。
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分家(ぶんけ):家制度において、あらたに独立して戸籍をつくる事。分家をするには、戸主の同意が必要だった。家族制度としては現在の民法には存在しないが、伝統的な茶道・華道などでは同じイメージで残っているのではないでしょうか。 [用語集トップに戻る]
法定相続人(ほうていそうぞくにん)(民法886-895条):民法で相続人とされている人。遺言がない場合は、この法定相続人が相続することになります。かなり複雑な既定ですので、概要のみを示します。配偶者は常に相続人になります。配偶者以外の相続人としては、子が最優先され、子がいない場合は被相続人の直系尊属、直系尊属も生存していない場合は兄弟姉妹となります。胎児は子として相続人になります。相続開始以前に子や兄弟姉妹が亡くなっていた場合などに、その者の子がいれば代襲相続がおきます。本来の相続人が相続できない場合として、 法定相続分(ほうていそうぞくぶん)(民法900条):法定相続人の間の相続割合(取り分)についての法律上の定め。ただし遺言や遺産分割協議によって異なる割合で相続することが出来る。配偶者と子供の場合は、配偶者と子供とで1/2づつ、配偶者と直系尊属の場合は配偶者が2/3で直系尊属が1/3、配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者が3/4で兄弟姉妹が1/4となる。直系尊属や兄弟姉妹や子供が複数の場合は均等配分とする。ただし、兄弟が相続人の場合に父母の片方が異なる子(半血ともいう)は父母が同じ子(全血ともいう)の子の1/2とする。平成25年の法改正(法務省の解説)で、嫡出子と非嫡出子の相続分は同等になりました。
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[用語集トップに戻る] 遺言(ゆいごん)(民法第5編第7章960-1027条):
15歳以上の能力のある者は遺言で財産を処分できますが、遺留分に違反することはできません。遺言は法律で定めた方式でないと無効になります。普通の方式としては(1)自筆証書遺言(2)公正証書遺言(3)秘密証書遺言の3種類が決められています。この3方式以外にも乗っている船が沈みそうな時などの特別な方式もあります。2人以上がひとつの証書でする共同遺言は認められません。遺言の効力、遺言の執行、遺言の撤回と取消しに関する規程があります。
[用語集トップに戻る] 遺言の証人(ゆいごんのしょうにん)(民法第5編第7章974条):
次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができません。この条件に合わない者であれば証人になれます。
一 未成年者
二 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
三 公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人
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